一般外科
一般外科
一般外科は、家庭では対応しきれない外傷や良性の腫瘤、腹部の急性疾患などを扱う診療科です。生活上で生じる切り傷、すり傷、やけど、床ずれなどの外傷、動物・虫の咬み傷や陥入爪(巻き爪)といった化膿性疾患、いぼ、粉瘤(ふんりゅう)・脂肪腫などの良性腫瘤も治療対象となります。このように一般外科の扱う疾患は幅広く、種類も多岐にわたります。お困りのことがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
上記以外のお悩みや困りごとがありましたら、何でもお気軽にご相談ください。
浅い表皮だけの切り傷であれば、出血があっても、通常、しばらく圧迫することで血が止まり、縫合の必要はありません。屋外でのけがや汚れたものでの切り傷は、化膿する危険性がありますので、生理食塩水や水道水でよく洗浄し、抗生剤入りの軟膏を塗布します。動物の引っ掻き傷など汚染創の場合は、加えて抗生剤を内服します。皮膚深部の皮下組織に達する切り傷では皮下脂肪や筋肉、骨が露出することもあります。洗浄や縫合を行わずに放置すると化膿して治りにくくなり、かつ後遺症を合併しやすくなります。
すり傷は、まず傷口の砂や泥などを水道水で洗い流すことが重要です。石鹸で洗っても構いません。出血がおさまればガーゼや絆創膏で保護しましょう。
もし傷口が大きく、深くえぐれてしまったときにはハンカチなどで保護した上で速やかに受診してください。治療ではまず傷口を洗い、砂やアスファルト、ガラス片などの異物片が埋まり込んでいないかを確認します。これらは化膿や長く残る傷あとの原因になるので丁寧に取り除きます。なお砂利などの異物の除去は、受傷後速やかにおこなうことが望ましいです。その後に軟膏処置など行い、必要な場合には抗生物質を処方します。
強くぶつけたりすることで生じる傷で、交通事故や転倒、スポーツ競技などで多くみられます。強い痛み、腫れ、出血を認める場合は、速やかに受診してください。必要時はX線検査などで骨折の有無を確認します。骨折がなければ鎮痛剤や湿布薬による治療を行います。皮膚が挫滅・欠損している場合は、すり傷に準じた治療をおこないます。
なお骨折やひどい捻挫が疑われた場合には整形外科へ紹介させていただくことがあります。
鋭いものが刺さって生じる傷で、傷口は小さく、深いことが特徴です。ナイフや包丁、釘、針、アイスピック、鉛筆などによる刺し傷が多くみられます。浅い刺し傷は問題が出ることは少ないですが、症状は部位によって大きく異なります。手や足の刺し傷で、腱(すじ)や筋肉が切れると、手・足・手の指・足の指の動きが悪くなることがあります。神経が切れれば、先端の知覚が鈍くなったり、動きが悪くなったりします。太い血管が切れてしまうと大きな出血を起こします。内臓に傷が達すると腹膜炎や腹腔内出血を起こし、緊急手術が必要となります。
浅い刺し傷は刺さったものを抜き、傷口を水道水で洗うだけで問題ありません。深い刺し傷は、刺さったものを抜かずに速やかに受診してください。
一般に熱湯や調理器具、アイロン、暖房器具など高温の液体や固体等が接することで生じる皮膚の損傷ですが、比較的低い温度(44~60度)で生じる低温熱傷もあります。この他、薬品(酸、アルカリ溶液など)による化学熱傷や電流(家庭電源、落雷など)による電撃傷なども含まれます。障害が皮下組織に及ぶと皮膚に潰瘍ができて治癒に時間を要します。
やけどをしたら、流水や氷でしっかり冷却することが大切です。水ぶくれがある場合は出来るだけ破らないようにしましょう。放置すると水ぶくれが破れて化膿することもありますので早めの受診をお勧めします。
一般には「床ずれ(とこずれ)」と呼ばれるものです。長期間寝たきりを余儀なくされている方や、車椅子生活の方などに多くみられます。体の同一部位が長時間圧迫されることにより、その部位の血流がなくなり、組織が損傷されることで発生します。骨の出っ張りと床に挟まれる部位にできやすく、仙骨部(お尻の正中部)、坐骨部(お尻下方の骨が突出する部位)、大転子部(大腿部の骨が突出する部位)、踵部(かかと)などが好発部位です。
始めのうちは、皮膚の赤みの持続、浮腫、水ぶくれ、表皮の剥がれといった症状が現れます。重症化すると浸出液が多くなり、細菌による化膿や組織が壊死を起こして白くなったり黒くなったりします。自宅や外来での褥瘡管理が難しい場合には、入院治療が必要となることもあります。
巻き爪は、爪が曲がって爪の下の皮膚をつかむように巻いている状態をいいます。陥入爪は爪の巻いた爪が皮膚に食い込むことで炎症や腫れ、疼痛が生じ、傷が化膿してしまうこともあります。巻き爪と陥入爪が合併して起こることも少なくありません。
予防には爪を正しく切ることが有効です。食い込んでいる爪を斜めにカットすると、爪が伸びるときに再び食い込むため、爪の角を残してカットすることをお勧めします。また、靴の選択や足の衛生管理などフットケアも大切です。早期治療を望まれる場合や、爪矯正などの保存的治療が無効な場合には手術をお勧めします。
正式な病名は表皮嚢腫と言います。体中のどこにでもできる良性の皮下腫瘍で、皮膚にある微小なくぼみの中に垢や脂がたまってしこりを形成します。米粒程度の盛り上がった状態から次第に大きくなり、数センチほどの半球状になることもあります。細菌感染により化膿することも多く、赤く腫れて痛みを有します。炎症により皮膚が自然に裂けて匂いのある膿が出てくる場合もありますが、通常は小さく切開して排膿処置をおこないます。小さく化膿していないものについては抗生剤の飲み薬や塗り薬を使用しますが、大きくなったものは局所麻酔で外科的に摘出します。
皮下に発生する良性の腫瘍です。背部、肩、頸部(くび)などに現れることが多く、四肢にもみられることがあります。痛みなどの症状は無く、皮膚がドーム状に盛り上がり、柔らかいしこりとして認められます。年単位でサイズが増大し、直径が5cm以上になるものもあります。治療は手術による脂肪腫の摘出で、再発することはまれです。
たこ(胼胝・べんち)皮膚表面の角質が厚く固くなったものであまり痛みはありません。スポーツでできる豆と同様のものです。
うおのめ(鶏眼・けいがん)はたこの真ん中に角質の芯があり、食い込んでしまうために強い痛みがあります。たこもうおのめも厚くなった角質や硬い芯を削り取る必要があります。
尚たこ、うおのめは局所への慢性的な刺激が原因となっており、削るだけでは再発を繰り返しますので、原因となる刺激の除去も重要です。
いぼ(疣贅・ゆうぜい)はウイルスに感染して生じるものです。顔や首などに出現する老人性のいぼ(老人性ゆうぜい)から手足にできるいぼ(尋常性ゆうぜい)まで種類も様々です。治療は過剰に増えた角質部分を削った上で液体窒素での凍結療法などをおこないます。
大腸の始まり部分である盲腸に付属している虫垂が炎症を起こす病気です。いわゆる“盲腸”という名称で広く知られています。幼児期から成人まで男女を問わずどの世代にも見られます。
右下腹部の痛みが特徴的な症状ですが、初めに胃の不快感や嘔吐で発症することも多いです。小さな子どもは普段より元気がない、機嫌が悪い、食欲が落ちる、といった症状から始まることもあります。炎症が進行すると、腹痛以外にも発熱や下痢といった症状が起こるようになってきます。
虫垂炎の重症度合いにより治療法も変わるため、身体所見や超音波検査・CTなどの所見を総合的にみることが必要です。炎症がそれほど進んでいない場合は手術ではなく、点滴や投薬、食事制限などで保存的に治療されることもあります。
鼠径ヘルニア(脱腸)は、おなかの中の臓器(腸管や内臓脂肪)が、腹壁の弱い部分から飛び出し、皮膚の下に脱出して瘤(こぶ)を作る病気です。下腹部、とくに左右の太ももの付け根部分(鼠径部)にぽっこりとした瘤ができ、押すと戻ったりします。不快感や違和感、痛みを伴うこともあります。原因には先天性と後天性があり、先天性の場合は、生まれつきヘルニア嚢(のう)が存在するため乳児期から発症します。後天性の場合は、おなかの中の圧力が高まるような慢性的な鼠径部への負担(排尿排便時の力み、慢性の咳、重量を上げる運動や仕事など)に加え、加齢で組織が脆弱化することによって発症すると考えられています。
出っ張りを押し込んで容易に戻る状態であれば緊急性はありませんが、脱出した部分が硬く張って戻らなくなる状態をヘルニア嵌頓(かんとん)といい、この状態を放置すると腸閉塞や腸の壊死を起こすことがあるため、早急な処置が必要となります。鼠径ヘルニアは自然に治癒することはなく、根治には手術が必要です。